マスタリングとは何をする作業?ミックスとの違いとプロの考え方を解説

DTMマスタリング

マスタリングとは何をする作業?

Ikumi Magataの作業風景

マスタリングとは、ミックスが完成した音源を最終的な作品として仕上げる工程です。

ミックスでは、ボーカル、ドラム、ベース、ギター、ピアノ、シンセなど、各トラックのバランスを調整します。

一方、マスタリングでは、基本的に完成した2chのステレオミックスを一つの音源として扱い、楽曲全体のバランスや音量感、ダイナミクスなどを最終調整します。

具体的には、

・全体の音量感を調整する
・周波数バランスを確認する
・ダイナミクスを整える
・ステレオイメージを確認する
・不要なピークを整理する
・配信やCDなどの用途に合わせて最終的な音源を書き出す

といった作業を行います。

ただし、マスタリングの目的は「音圧を最大まで上げること」ではありません。

楽曲としての魅力を維持しながら、最終作品として適切な状態に仕上げることがマスタリングの大きな役割です。

ミックスとマスタリングは何が違う?

Ikumi Magataの作業風景

ミックスとマスタリングは、どちらも音源の音を整える作業ですが、対象となる範囲が違います。

ミックスでは、各トラックを個別に調整します。

例えば、

「ボーカルを少し大きくする」

「ギターを左右に広げる」

「ベースの低域を整理する」

といった処理です。

一方、マスタリングでは、完成したミックス全体を一つの音源として調整します。

そのため、

「ボーカルだけを2dB下げる」

といった細かい処理は、基本的にはミックス段階で行います。

マスタリングは、楽曲全体を俯瞰して最終的なバランスを確認する工程と考えると分かりやすいでしょう。

マスタリングをすればミックスの問題も直せる?

Ikumi Magataの作業風景

マスタリングで修正できる問題もありますが、すべての問題を解決できるわけではありません。

例えば、

・全体的に低域が多い
・高域が少し暗い
・全体の音量感が不足している
・ステレオイメージを少し調整したい

といった問題は、マスタリングで対応できる場合があります。

しかし、

・ボーカルだけが小さい
・ギターだけが大きい
・ベースとキックが大きくぶつかっている
・特定のシンセだけ音量が大きい

といった問題は、ミックスに戻って修正した方が適切です。

マスタリングで無理に修正しようとすると、問題のない他の楽器まで影響を受けてしまうからです。

マスタリングでEQは何のために使う?

Akashic Music Production の機材写真、EQ

マスタリングでもEQは重要なツールです。

ただし、ミックスのEQとは目的が少し異なります。

ミックスでは、個々の楽器の音色やマスキングを整理するためにEQを使います。

一方、マスタリングでは、楽曲全体の周波数バランスを確認します。

例えば、

・低域が少し膨らんでいる
・中域が強すぎる
・高域が少し不足している

といった、楽曲全体の傾向を調整します。

ここで重要なのは、大きくEQを動かせば良いわけではないということです。

マスタリングでは、わずかなEQ調整でも楽曲全体に影響します。

そのため、必要な問題だけを慎重に調整します。

マスタリングでコンプレッサーは必要?

Ikumi Magataの作業風景

マスタリングでコンプレッサーを使用する場合もあります。

目的は、単純に音圧を上げることではありません。

例えば、楽曲全体のダイナミクスを少し整理したり、音のまとまりを作ったりするために使用します。

ただし、すべての楽曲にコンプレッサーが必要とは限りません。

すでにミックスのダイナミクスが適切であれば、無理にコンプレッサーを追加する必要はありません。

「マスタリングだからコンプレッサーを使う」のではなく、「必要だから使う」という考え方が重要です。

マスタリングでリミッターは何のために使う?

Ikumi Magataの作業風景

リミッターは、マスタリングでよく使用されるプロセッサーの一つです。

主な役割は、ピークを一定のレベル以下に抑えながら、全体の音量感を調整することです。

しかし、リミッターを強くかければかけるほど良いわけではありません。

過剰にリミッティングすると、

・音が潰れる
・ドラムのアタックが弱くなる
・低域が不自然になる
・音楽の抑揚がなくなる
・聴き疲れしやすくなる

といった問題が起こる可能性があります。

そのため、リミッターは「音圧を最大化するためのツール」ではなく、「最終的な音量感を適切に整えるためのツール」として考えることが重要です。

マスタリングではどれくらい音圧を上げればいい?

Akashic Music Production の機材写真、CubaseとWindows、MIDIキーボード、ムジークのモニタースピーカー

「マスタリングでは何LUFSにすればいいですか?」

という疑問は非常に多いですが、すべての楽曲に共通する正解があるわけではありません。

ジャンル、アレンジ、ダイナミクス、楽曲の目的などによって適切な音量感は変わります。

また、配信サービスではラウドネス・ノーマライゼーションが行われるため、単純にLUFSを高くすれば有利になるわけでもありません。

重要なのは、数字だけを見るのではなく、

「この音量まで上げたときに、楽曲の魅力が維持されているか」

を確認することです。

音圧を上げることによってパンチやダイナミクスが失われるのであれば、音量を少し下げた方が結果的に良いマスタリングになる場合があります。

マスタリングで音圧が上がらないのはなぜ?

Ikumi Magataの作業風景

マスタリングで音圧を上げられない原因は、マスタリング処理そのものにあるとは限りません。

例えば、

・キックのピークが大きすぎる
・低域のエネルギーが過剰
・特定の音だけ瞬間的に大きい
・ミックス全体のダイナミクスが不安定
・トランジェントが極端に大きい

といった状態では、リミッターがそれらのピークに反応します。

その結果、全体の音量を上げようとしても、すぐにリミッターが深く動作してしまいます。

このような場合は、マスタリングで無理に音圧を上げるより、ミックスに戻って問題を解決する方が効果的です。

つまり、良いマスタリングをするためには、良いミックスを作ることも重要です。

マスタリング前のミックスには何が必要?

Ikumi Magataの作業風景

マスタリングに渡すミックスは、まず楽曲として完成している必要があります。

具体的には、

・各パートの音量バランスが整っている
・ボーカルの音量が適切
・低域が整理されている
・不要なマスキングが少ない
・必要なダイナミクスが残っている
・過剰なリミッター処理をしていない

などを確認します。

また、マスタリングで問題を修正してもらうことを前提にしてミックスを作るのではなく、「自分が完成したと思えるミックス」を用意することが重要です。

そのうえで、マスタリングによって最終的な完成度を高めます。

マスタリング前にマスターを0dBまで上げておくべき?

Ikumi Magataの作業風景

マスタリング前のミックスでは、マスターのピーク値を0dBに近づけること自体を目的にする必要はありません。

重要なのは、マスターのメーターを0dBにすることではなく、ミックスが適切な状態であることです。

マスタリングで必要な処理を行うための余裕を確保し、クリッピングしていない状態で書き出すことが基本です。

また、「マスターのピークが何dBFSなら正解」という単一の数値だけで判断することもおすすめしません。

ピーク値だけでは、ミックスの品質を判断できないからです。

マスタリングでは何を確認する?

Ikumi Magataの作業風景

マスタリングでは、プラグインを挿して音を変えることだけが作業ではありません。

むしろ、音を確認することが非常に重要です。

例えば、

・周波数バランス
・低域の量
・中域の密度
・高域の明るさ
・ダイナミクス
・トランジェント
・ステレオイメージ
・音量感
・曲全体のバランス

などを確認します。

また、複数の再生環境で確認することも重要です。

スタジオモニターだけでなく、ヘッドホンやイヤホン、一般的なスピーカーなどで確認することで、特定の環境だけでは分からない問題を発見できます。

マスタリングではリファレンス曲を使うべき?

Akashic Music Production の機材写真、Mac StudioとIcon P1 - Nano

リファレンス曲は、マスタリングにおいて非常に有効です。

自分の楽曲だけを長時間聴いていると、耳がその音に慣れてしまい、バランスの問題に気づきにくくなることがあります。

そこで、目標に近いプロの楽曲と比較します。

例えば、

・低域の量
・ボーカルの位置
・高域の明るさ
・全体の音量感
・ダイナミクス
・ステレオの広がり

などを比較します。

ただし、単純に「リファレンス曲と同じ音」にすることが目的ではありません。

自分の楽曲がどのような違いを持っているのかを確認するために使用します。

マスタリングは自分でもできる?

Akashic Music Production の機材写真、CubaseとWindows、MIDIキーボード、ムジークのモニタースピーカー

もちろん、自分でマスタリングすることは可能です。

現在は高品質なEQ、コンプレッサー、リミッター、メータリングプラグインなどが手軽に利用できるため、DTM環境だけでも十分にマスタリングを行えます。

ただし、自分のミックスを自分でマスタリングする場合には、一つの問題があります。

それは「自分の音を客観的に聴くことが難しい」ということです。

長時間制作した楽曲ほど、問題点に慣れてしまいます。

そのため、一度時間を置いてからマスタリングを行ったり、リファレンス曲と比較したりすることが重要です。

また、最終的な判断に自信がない場合は、第三者にマスタリングを依頼することも有効です。

ミックスとマスタリングを同じ人が行ってもいい?

Ikumi Magataの作業風景

問題ありません。

実際に、ミックスとマスタリングを同じエンジニアが行うケースもあります。

ただし、同じ人が行う場合は、客観性を保つことが重要です。

ミックス直後にそのままマスタリングを始めると、自分が作った音に慣れているため、問題を見落とす可能性があります。

そのため、

・一度時間を置く
・リファレンス曲を使う
・小さな音量でも確認する
・複数の再生環境で確認する
・必要ならミックスに戻る

といった方法が有効です。

Ikumi Magataの実体験|Mastering評価点1位を獲得して感じたこと

Ikumi Magataの作業風景

Akashic Music Production代表のIkumi Magataは、SKIO国際リミックスコンテストのIndie Dance部門で3位、Mastering評価点1位、Mixing評価点3位の評価を獲得しています。

この経験からも、マスタリングで重要なのは、単純に音圧を上げることではないと考えています。

マスタリングでは、楽曲全体を一つの作品として聴きます。

低域が適切か。

ボーカルが自然に聞こえるか。

高域が過剰になっていないか。

リミッターによってパンチが失われていないか。

ミックスの魅力がマスタリング処理によって損なわれていないか。

こうしたことを一つずつ確認します。

特に意識しているのは、「マスタリングをした結果、音が良くなったのか、それとも単純に音が大きくなっただけなのか」を区別することです。

音量を上げるだけなら比較的簡単です。

しかし、音量を上げても楽曲のダイナミクスやパンチ、自然な質感を維持するためには、ミックスの状態を含めて判断する必要があります。

マスタリングで大切なのは「何もしない」という判断

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マスタリングでは、プラグインをたくさん使用する必要はありません。

場合によっては、EQを少し調整して、リミッターで最終的な音量感を整えるだけで十分なこともあります。

重要なのは、

「何か処理をしなければいけない」

と考えないことです。

すでにバランスが良い音源であれば、過剰な処理をしない方が良い結果になることがあります。

マスタリングエンジニアには、音を変える技術だけでなく、「変えない方が良い部分を判断する技術」も必要です。

マスタリングで音を良くするために、やりすぎないことも重要

Akashic Music Production の機材写真、EQ

マスタリングでは、EQやコンプレッサー、サチュレーション、ステレオイメージャー、リミッターなど、多くの処理を組み合わせることができます。

しかし、処理を増やせば音が良くなるわけではありません。

例えば、

高域が足りないからEQで大きくブーストする。

音圧が足りないからリミッターを強くする。

広がりが足りないからステレオイメージを広げる。

といった処理を重ねていくと、最初にはなかった問題が発生する場合があります。

マスタリングでは、問題を一つずつ確認し、本当に必要な処理だけを行うことが重要です。

マスタリングの目的は「プロっぽい音」にすること?

Ikumi Magataの作業風景

マスタリングによって音源の完成度を高めることはできますが、「プロっぽい音」という曖昧な目標だけを設定するのはおすすめできません。

なぜなら、プロの楽曲でもジャンルやアーティストによって音の方向性が大きく異なるからです。

重要なのは、

「この楽曲では何を魅力として聴かせたいのか」

を明確にすることです。

例えば、

・ボーカルの存在感
・ドラムのパンチ
・ベースのグルーヴ
・ギターの質感
・シンセの広がり

など、楽曲によって優先すべき要素は変わります。

マスタリングは、それらの魅力を損なわずに、最終的な作品として整える工程です。

マスタリングを依頼するなら、どんなとき?

Akashic Music Production の機材写真、CubaseとWindows、MIDIキーボード、エレキギター

マスタリングをプロに依頼するメリットが大きいのは、

・自分のミックスを客観的に判断できない
・リファレンス曲と比較しても違いが分からない
・音圧を上げると音が潰れてしまう
・低域のバランスに自信がない
・配信リリース用の最終音源に不安がある
・コンテストやレーベルへの提出音源を仕上げたい

といった場合です。

特に、自分では何が問題なのか分からない場合は、専門家に一度チェックしてもらうだけでも、多くの発見があります。

まとめ|マスタリングは楽曲を最後に「完成作品」へ仕上げる工程

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マスタリングとは、完成したミックスを最終的な作品として仕上げる工程です。

ミックスでは各トラックを調整し、マスタリングでは完成した楽曲全体を調整します。

マスタリングでは、

・EQ
・コンプレッサー
・リミッター
・サチュレーション
・ステレオ処理
・メータリング

などのツールを必要に応じて使用します。

しかし、重要なのはプラグインの数や処理量ではありません。

楽曲全体を客観的に聴き、

「何を直す必要があるのか」

「何を変えない方がいいのか」

を判断することです。

また、マスタリングだけでミックスの問題をすべて解決することはできません。

良いマスタリングには、良いミックスが必要です。

そして良いミックスには、整理されたアレンジや適切な音色選択が必要です。

最終的な音源の完成度を高めるためには、作曲、編曲、ミックス、マスタリングをそれぞれ独立した作業として考えるのではなく、一つの音楽制作工程として捉えることが重要です。

Akashic Music Productionでは、楽曲のジャンルやアレンジ、目指すサウンドを踏まえ、単純に音量を上げるだけではないマスタリングを行っています。

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