ミックスとマスタリングの違いとは?それぞれの役割と依頼するタイミングを解説
- ミックスとマスタリングは何が違う?
- ミックスでは何をする?
- マスタリングでは何をする?
- ミックスとマスタリングは、どちらが重要?
- ミックスだけで音源を完成させてもいい?
- マスタリングだけ依頼すれば、プロの音になる?
- ミックスとマスタリングを同じ人に依頼してもいい?
- ミックスとマスタリングはどちらを先に依頼する?
- ミックスとマスタリングの違いを具体例で考える
- ミックスで大切なのは音量バランスだけ?
- マスタリングで音圧を上げすぎるとどうなる?
- ミックスで音圧を作っておくことも重要
- ミックスとマスタリングでは、聴き方も変わる
- Ikumi Magataの実体験|Mixing評価3位、Mastering評価1位から考える役割分担
- 自分でミックスとマスタリングをするときの注意点
- ミックスを依頼するべきなのはどんな人?
- マスタリングを依頼するべきなのはどんな人?
- ミックスとマスタリングを依頼するときに伝えるべきこと
- まとめ|ミックスとマスタリングは役割が違う
ミックスとマスタリングは何が違う?
ミックスとマスタリングは、どちらも完成度の高い音源を作るために重要な工程ですが、役割は異なります。
簡単に説明すると、
ミックスは「各トラックを整理して、楽曲として成立させる作業」です。
マスタリングは「完成したミックスを、最終的な作品として仕上げる作業」です。
例えば、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、ピアノ、シンセなどが別々のトラックに録音されている場合、ミックスではそれぞれの音量や音色、定位、奥行きなどを調整します。
一方、マスタリングでは、完成したステレオミックス全体を確認し、最終的な音量感や周波数バランス、ダイナミクスなどを調整します。
ミックスでは何をする?
ミックスでは、楽曲を構成している複数のトラックを、一つのまとまりのある音源に仕上げます。
主な作業には、
・音量調整
・パンニング
・EQ
・コンプレッション
・リバーブ
・ディレイ
・サチュレーション
・オートメーション
などがあります。
例えば、ボーカルがギターに埋もれている場合、ボーカルの音量を上げるだけではなく、ギターの音量やEQ、定位などを調整することで、ボーカルが自然に聞こえるようにします。
つまりミックスでは、各トラックを単体で良い音にするだけではなく、「楽曲全体の中で各パートが適切な役割を果たしているか」を考えます。
マスタリングでは何をする?
マスタリングでは、完成したミックスを一つの音源として扱います。
主な作業には、
・全体の音量調整
・周波数バランスの調整
・ダイナミクスの調整
・リミッティング
・ステレオイメージの確認
・曲間の音量やバランスの調整
・最終的なファイルの確認
などがあります。
ミックスのように「ボーカルだけ」「ギターだけ」という単位で細かく調整するのではなく、楽曲全体を俯瞰して最終的なバランスを整えます。
ミックスとマスタリングは、どちらが重要?
どちらも重要ですが、基本的にはミックスが適切な状態になっていることが、良いマスタリングにつながります。
例えば、ミックスの段階で、
・ボーカルが小さい
・ギターが大きすぎる
・ベースとキックがぶつかっている
・特定の音だけピークが大きい
といった問題がある場合、マスタリングで無理に修正すると、他のパートにも影響が出てしまいます。
そのため、
「ミックスの問題はミックスで解決する」
という考え方が重要です。
マスタリングは、ミックスで完成した楽曲をさらに最終調整する工程として考えると分かりやすいでしょう。
ミックスだけで音源を完成させてもいい?
場合によっては可能です。
例えば、自分でミックスを完成させ、そのまま配信やデモとして使用することもできます。
ただし、最終的な音量感や周波数バランス、ダイナミクスなどを客観的に確認したい場合は、マスタリングを行うメリットがあります。
特に、自分のミックスを長時間聴いていると、耳がその音に慣れてしまいます。
第三者によるマスタリングでは、制作者自身が気づいていなかった問題を発見できる場合があります。
マスタリングだけ依頼すれば、プロの音になる?
必ずしもそうではありません。
マスタリングは非常に重要な工程ですが、マスタリングだけでミックスの問題をすべて解決することはできません。
例えば、ボーカルが明らかに小さいミックスをマスタリングに渡した場合、マスタリングエンジニアがボーカルだけを大きくすることは基本的にできません。
全体をEQで処理したり、ダイナミクスを調整したりすることである程度対応できる場合もありますが、ミックスに戻った方が自然に解決できる問題もあります。
そのため、マスタリングを依頼するときは、まず「ミックスとして完成しているか」を確認することが重要です。
ミックスとマスタリングを同じ人に依頼してもいい?
問題ありません。
むしろ、ミックスとマスタリングを同じエンジニアに依頼するメリットもあります。
同じエンジニアであれば、楽曲の意図やサウンドの方向性を理解したうえで、ミックスからマスタリングまで一貫した判断ができます。
例えば、マスタリングを行った結果、
「低域が少し多い」
「ボーカルがもう少し前に出た方がいい」
と判断した場合、ミックスに戻って修正することもできます。
ミックスとマスタリングを完全に別々の工程として考えるのではなく、必要に応じて行き来できることは大きなメリットです。
ミックスとマスタリングはどちらを先に依頼する?
通常はミックスが先です。
まず各トラックをミックスして、一つの完成したステレオ音源を作ります。
その後、そのステレオミックスをマスタリングします。
基本的な流れは、
作曲・編曲
↓
録音・編集
↓
ミックス
↓
マスタリング
↓
最終ファイル作成
となります。
ただし、実際の制作ではマスタリングの結果を確認してからミックスへ戻ることもあります。
そのため、完全に一方向へ進む作業というより、「ミックスとマスタリングを行き来しながら完成度を高める」と考える方が実際の制作に近いでしょう。
ミックスとマスタリングの違いを具体例で考える
例えば、ボーカル曲で、
「ボーカルがギターに埋もれている」
という問題があるとします。
この場合、まずミックスで、
・ボーカルの音量を調整する
・ギターを少し下げる
・ギターの定位を調整する
・ギターのEQを調整する
・必要に応じてボーカルをコンプレッションする
などの処理を行います。
一方、マスタリングで、
「曲全体が少し暗く聞こえる」
という問題がある場合は、マスタリングで全体の周波数バランスを調整します。
このように、問題が「個々のトラック」にあるのか、「楽曲全体」にあるのかによって、適切な工程が変わります。
ミックスで大切なのは音量バランスだけ?
ミックスは、単純な音量調整ではありません。
もちろん音量バランスは非常に重要ですが、それ以外にも、
・どの楽器を中央に置くか
・どの楽器を左右に配置するか
・どの音を前に出すか
・どの音を後ろに置くか
・どの音域をどの楽器に使わせるか
・どのタイミングで音を目立たせるか
などを決めます。
つまりミックスは、音楽的な優先順位を音響的に表現する作業でもあります。
マスタリングで音圧を上げすぎるとどうなる?
マスタリングでは、リミッターなどを使用して音量感を上げることがあります。
しかし、音圧を上げすぎると、
・ドラムのアタックが弱くなる
・音が潰れる
・ダイナミクスがなくなる
・低域が不自然になる
・聴き疲れしやすくなる
などの問題が起こる可能性があります。
そのため、マスタリングでは「どこまで音量を上げられるか」ではなく、「どこまで上げても楽曲の魅力を維持できるか」を判断することが重要です。
ミックスで音圧を作っておくことも重要
音圧はマスタリングだけで作るものではありません。
ミックスの段階で、
・不要な低域を整理する
・不要なピークを抑える
・キックとベースの関係を整理する
・各パートの音量を適切にする
・マスキングを減らす
などを行っておくことで、マスタリングで音圧を上げやすくなります。
逆に、ミックスの段階で低域が過剰だったり、特定の音だけピークが大きかったりすると、マスタリング時にリミッターが過剰に動作することがあります。
そのため、音圧を考える場合も、ミックスとマスタリングを切り離して考えないことが重要です。
ミックスとマスタリングでは、聴き方も変わる
ミックスでは、各トラックの関係を細かく確認します。
例えば、
「ボーカルとギターがぶつかっていないか」
「キックとベースのバランスはどうか」
「シンセがボーカルを邪魔していないか」
などを確認します。
一方、マスタリングでは、より大きな視点で楽曲を確認します。
「全体の低域は多すぎないか」
「高域が疲れないか」
「曲全体の音量感は適切か」
「リファレンス曲と比べてどのような違いがあるか」
といった判断を行います。
つまり、ミックスでは「部分と全体の関係」を見て、マスタリングでは「作品全体」を見るイメージです。
Ikumi Magataの実体験|Mixing評価3位、Mastering評価1位から考える役割分担
Akashic Music Production代表のIkumi Magataは、SKIO国際リミックスコンテストのIndie Dance部門で3位、Mastering評価点1位、Mixing評価点3位の評価を獲得しています。
この経験からも、MixingとMasteringは、それぞれ別の役割を持っていると考えています。
Mixingでは、各楽器の役割や音量、周波数、定位、奥行きを整理し、楽曲の中でそれぞれの音が適切に機能する状態を作ります。
Masteringでは、その完成したミックスを一つの作品として聴き、全体のバランスや音量感、ダイナミクスなどを最終的に確認します。
私が特に意識しているのは、「マスタリングで解決しようとしすぎない」ことです。
ミックスの段階で解決できる問題は、できるだけミックスで解決します。
例えばボーカルが埋もれているなら、マスター全体を明るくするのではなく、ボーカルと競合しているギターやシンセを確認します。
このように問題が発生している場所まで戻って処理することで、最終的な音源をより自然に仕上げることができます。
自分でミックスとマスタリングをするときの注意点
自分で両方の工程を行う場合、最も注意したいのが「客観性」です。
ミックスを完成させた直後は、その音に耳が慣れています。
そのままマスタリングを行うと、わずかな周波数バランスの偏りや音量感の問題を見落とす可能性があります。
対策として、
・一度時間を置く
・リファレンス曲と比較する
・小さな音量でも確認する
・ヘッドホンとスピーカーの両方で確認する
・モノラルでも確認する
などの方法があります。
特に重要なのは、ミックスとマスタリングの間に一度「制作者としての耳」をリセットすることです。
ミックスを依頼するべきなのはどんな人?
ミックスをプロに依頼するメリットが大きいのは、
・各楽器のバランスに自信がない
・ボーカルが埋もれてしまう
・低域が濁ってしまう
・音圧を上げると音が潰れる
・リファレンス曲との差が分からない
・自分でミックスすると完成までに時間がかかりすぎる
といった場合です。
特に、自分では何が問題なのか分からない場合は、専門家にミックスを依頼することで、音源の問題点を客観的に整理できます。
マスタリングを依頼するべきなのはどんな人?
マスタリングをプロに依頼するメリットが大きいのは、
・ミックスは完成している
・最終的な音量感に自信がない
・低域や高域のバランスを客観的に確認したい
・配信リリース用の最終音源を作りたい
・レーベルやコンテストに提出する音源を仕上げたい
・自分のミックスを第三者にチェックしてほしい
といった場合です。
ただし、マスタリングを依頼する前に、まずミックスが完成しているかを確認することが重要です。
ミックスとマスタリングを依頼するときに伝えるべきこと
エンジニアに依頼するときは、「プロっぽくしてください」というだけではなく、できるだけ具体的な情報を伝えると効果的です。
例えば、
・目指しているジャンル
・参考にしたい楽曲
・特に聴かせたいパート
・現在感じている問題
・リリース予定の媒体
・音量感についての希望
などです。
特にリファレンス曲がある場合は、共有すると音の方向性を理解してもらいやすくなります。
まとめ|ミックスとマスタリングは役割が違う
ミックスとマスタリングは、どちらも音源制作に欠かせない工程ですが、役割が異なります。
ミックスは、
「各トラックを整理して、楽曲として成立させる工程」
です。
マスタリングは、
「完成したミックスを、最終的な作品として仕上げる工程」
です。
ボーカルが埋もれている、ギターが大きすぎる、ベースとキックがぶつかっているといった問題は、基本的にミックスで解決します。
一方、完成したミックス全体の周波数バランスや音量感、ダイナミクスなどを最終的に整えるのがマスタリングです。
そして、良いマスタリングには良いミックスが必要です。
ミックスとマスタリングをそれぞれの役割に応じて適切に行うことで、楽曲本来の魅力を残しながら、リリースやコンテストへの提出にも適した完成度の高い音源へ仕上げることができます。
Akashic Music Productionでは、MixingとMasteringを単なる音響処理としてではなく、楽曲の作曲・編曲やジャンル、目指すサウンドまで考慮した音楽制作の一工程として捉えています。
